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中小企業の事業承継支援

国による中小企業の事業承継の支援制度

 多くの労働者を雇用し地域経済・社会を支える中小企業において、経営者の高齢化が進んでおり、後継者を確保できずに廃業する例も増えています。そのような損失を防ぐため、M&Aを含む事業承継※1を支援する仕組みが多数講じられています。
 後継者不在の小規模事業の経営者は、自分の会社を廃業することが社会的な損失であると認識していないことも多く、専門家による積極的な働きかけが必要と言われています。
 また、多くの中小企業において、事業承継に取り組むのは初めてであることが多く、その検討・実行の過程において外部の専門家によるサポートを受けることは非常に有益です。
 しかし、この外部専門家の手数料や契約条項等は玉石混交であり、中小企業庁が公表した「中小M&Aガイドライン※2」を遵守する等の基準を満たした者を「登録FA・仲介業者」とする、M&A支援機関の登録制度が創設されました。

 

※1 事業承継における継承者(受け継ぐ側)は、@親族、A社内(役員・従業員)、B社外の3つに分けられます。中小M&Aガイドラインにおいては、Bの「社外へ承継する事業承継」を広く「中小M&A」としています。

※2 令和2年3月に初版、令和5年9月に第2版が公表されました。

  急増するM&A専門業者に対して、契約内容・手数料の分かりにくさ、支援業務の質の低さ等が指摘されたことから、第2版においては関連する規定が補強されています。

  当事務所においては、ガイドラインの改訂以前から、国家資格に関する法令上の義務として、@知識・能力の向上、A顧客利益を最優先とする業務遂行等を当然のこととしておりましたが、その重要性を再確認しています。

 

 同じく中小企業庁が実施する「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」においては、一部の専門的な業務(弁護士・会計士・社労士等によるデューデリジェンスの費用、司法書士に依頼する登記の費用等)を除き、登録FA・仲介業者でない者による中小M&A手続きの総合的な支援業務を補助対象外とすることになりました。
(正確な内容は補助金の公募要領等を確認してください。)

 

 この登録制度は、M&A支援機関としての能力等を保証するものではありませんし、補助金を利用しない場合には直接的な影響はありません。
 しかし、国の作ったガイドラインを守るといった最低限の基準も満たそうとしない民間事業者を、支援機関としてあえて選ぶ必要性は低いように思います。
 また、@親族、A社内(役員・従業員)の人材への事業承継が可能な場合でも、もしB社外への事業承継をする場合にはどうなるのか?をアドバイスできる者を活用することが有益なこともあるでしょう。

中小M&Aガイドライン遵守の宣言

 当事務所は、上記の「登録FA・仲介業者」に登録されました。
 登録FA・仲介業者に義務付けられた中小M&Aガイドライン遵守の宣言について、以下のとおり掲載します。

遵守を宣言した内容

支援の質の確保・向上に向けた取組
善管注意義務(忠実義務)及び職業倫理
  1. 依頼者との契約に基づく義務を履行する。履行が求められる義務の内容は下記のとおり。
    • 善良な管理者の注意(善管注意義務)をもって仲介業務・FA業務を行う。
    • 依頼者の利益を犠牲にして自己又は第三者の利益を図らない。
    • (仲介者の場合)いずれの依頼者に対しても公平・公正であり、いずれか一方の利益の優先やいずれか一方の利益を不当に害するような対応をしない。
  2. 契約上の義務を負うかにかかわらず、職業倫理として、依頼者の意思を尊重し、利益を実現するための対応を行う。
経営トップの意識
  1. 代表者が、支援の質の確保・向上のため、@知識・能力向上、A適正な業務遂行を図ることが不可欠であることを認識し、当該取組が重要である旨のメッセージを社内外に発信するとともに、発信したメッセージと整合的な取組を実施する。
知識・能力の向上のための取組
  1. 知識・能力の向上のため実効性のある取組を実施する。例えば、下記の取組。
    • 自社が提供する支援の内容に応じて求める知識・能力の水準を可能な限り明らかにした上で、その水準に達するよう人材育成を行う(例えば、人材育成方針の策定・実施。社内研修の整備、社外の研修の受講支援等。)
    • 知識・能力向上の取組や成果を適切に評価する(例えば、人事評価の一項目とし、適切に評価するとともに、報酬・給与に反映する等。)
適正な業務遂行のための取組
  1. 支援業務を行う役員や従業員における業務の適正な遂行を確保する。例えば下記の取組。
    • 役員・従業員に適正な業務遂行の必要性等を理解させるとともに、適正な業務遂行を行う仕組みを作る(例えば、本ガイドラインを踏まえて、業務規程・業務マニュアルに業務遂行上のルールを記載する、業務上使用する各種書式を作成する等)。
    • 適正な業務遂行のために適した体制で支援を実施する(例えば、M&A の支援の経験や知識が十分でない者が業務を担当する場合には経験や知識が十分な者と業務を行わせる、その旨を社内規則等に定める等)。
    • 善管注意義務や職業倫理に抵触する行為を把握するための仕組みや、これらの行為が見受けられた場合に適切に対応する仕組みを整備する(例えば、社内相談窓口の設置や、懲戒事由として規定し、適切に懲戒権を行使できる体制を整えておく等)。
    • 依頼者から業務に関する苦情等を受け付け、適切に対応する仕組み・体制を整備する。
  2. (業務の一部を第三者に委託する場合)外部委託先における業務の適正な遂行を確保すること。例えば下記の取組。
    • 委託する業務の内容に照らして、適切な委託先を選定する(例えば、選定基準を定め、当該基準に従い選定する等)
    • 第三者に業務の一部を委託する場合の情報の取扱い等が適切なものとなるようにし、依頼者に説明した上で、その了承を得る(例えば、委託元である M&A 専門業者が委託先に対し、依頼者に対し秘密保持義務を負う情報を提供する場合には、委託先に同様の秘密保持義務を負わせ、委託先からさらに第三者に対し情報が提供されないこととする等)
    • 委託先との契約において、委託する業務を明らかにする。委託先における委託業務の実施状況を委託元が合理的に把握するための規定を盛り込むことが望ましい。
    • 委託先における委託業務の実施や情報管理の状況を適切に監督・指導する(例えば、委託先の管理に関する委託元における責任部署を明確化し、定期的又は必要に応じて業務の遂行状況を確認する等)
    • 委託業務に関する苦情等について委託元である M&A 専門業者が受け付け、適切に対応する(例えば、依頼者から委託元である M&A 専門業者への直接の連絡体制を設ける等)
各工程の具体的な行動指針
意思決定
  1. 専門的な知見に基づき、中小企業に対して実践的な提案を行い、中小M&Aの意思決定を支援する。その際の留意点は下記のとおり。
    • 当該中小M&Aにおいて想定される重要なメリット・デメリットを知り得る限り、相談者に対して明示的に説明する。
    • 相談者の企業情報の取扱いについても善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負っていることを自覚する。
仲介契約・FA契約の締結
  1. 業務形態の実態に合致した仲介契約・FA契約を締結する。
  2. 契約締結前に依頼者に対し仲介契約・FA契約に係る重要な事項について明確な説明を行い、依頼者の納得を得る。契約に係る重要な事項を記載した書面を交付(メール送付等といった電磁的方法による提供を含む。)して行う。説明すべき重要な点は下記のとおり。
    • 譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と契約を締結し双方に助言する仲介者、一方当事者のみと契約を締結し一方のみに助言するFAの違いとそれぞれの特徴(仲介者として両当事者から手数料を受領する場合には、その旨も含む。)
    • 提供する業務の範囲・内容(マッチングまで行う、バリュエーション、交渉、スキーム立案等)
    • 手数料に関する事項(算定基準、金額、最低手数料、既に支払を受けた手数料の控除、支払時期等)
    • 手数料以外に依頼者が支払うべき費用(費用の種類、支払時期等)
    • 秘密保持に関する事項(依頼者に秘密保持義務を課す場合にはその旨、秘密保持の対象となる事実、士業等専門家や事業承継・引継ぎ支援センター等に開示する場合の秘密保持義務の一部解除等)
    • 直接交渉の制限に関する事項(依頼者自らが候補先を発見すること及び依頼者自ら発見した候補先との直接交渉を禁止する場合にはその旨、直接交渉が制限される候補先や交渉目的の範囲等)
    • 専任条項(セカンド・オピニオンの可否等)
    • テール条項(テール期間、対象となるM&A等)
    • 契約期間(契約期間、更新(期間の延長)に関する事項等)
    • 契約の解除に関する事項及び依頼者が、仲介契約・FA契約を中途解約できることを明記する場合には、当該中途解約に関する事項
    • 責任(免責)に関する事項(損害賠償責任が発生する要件、賠償額の範囲等)
    • ※なお、かかる条項を依頼者に対して説明することと当該条項の法的な効力の有無とは別の問題であり、説明したからといって法的な効力が認められる関係にはない。

    • 契約終了後も効力を有する条項(該当する条項、その有効期間等)
    • (仲介者の場合)依頼者との利益相反のおそれがあるものと想定される事項
  3. 上記9の説明は、契約を締結する権限を有する者(個人の場合には、当該個人。法人の場合には、代表者又は契約締結について委任を受けた者。)に対し行う。
  4. 上記9の説明の後、契約締結について適切に判断するために、依頼者に対し、十分な検討時間を与える。
バリュエーション(企業価値評価・事業評価)
  1. バリュエーションの実施に当たっては、評価の手法や前提条件等を依頼者に事前に説明し、評価の手法や価格帯についても依頼者の納得を得る。
譲り受け側の選定(マッチング)
  1. 秘密保持契約締結前の段階で、譲り渡し側に関する詳細な情報が外部に流出・漏えいしないよう注意する。
交渉
  1. 慣れない依頼者にも中小M&Aの全体像や今後の流れを可能な限り分かりやすく説明すること等により、寄り添う形で交渉をサポートする。
デュー・デリジェンス(DD)
  1. デュー・デリジェンス(DD)の実施に当たっては、譲り渡し側に対し譲り受け側が要求する資料の準備を促し、サポートする。
最終契約の締結
  1. 最終契約の締結に当たっては、契約内容に漏れがないよう依頼者に対して再度の確認を促す。
クロージング
  1. クロージングに向けた具体的な段取りを整えた上、当日には譲り受け側から譲渡対価が確実に入金されたことを確認する。
仲介契約・FA契約の契約条項に関する留意点
専任条項の留意点
  1. 専任条項を設ける場合、その対象範囲を可能な限り限定する。依頼者が他の支援機関の意見を求めたい部分を仲介者・FAに対して明確にした上、これを妨げるべき合理的な理由がない場合には、依頼者に対し、他の支援機関に対してセカンド・オピニオンを求めることを許容する。ただし、相手方当事者に関する情報の開示を禁止したり、相談先を法令上又は契約上の秘密保持義務がある者や事業承継・引継ぎ支援センター等の公的機関に限定したりする等、情報管理に配慮する。
  2. 専任条項を設ける場合には、仲介契約・FA契約の契約期間を最長でも6か月〜1年以内を目安として定める。
  3. 依頼者が任意の時点で仲介契約・FA契約を中途解約できることを明記する条項等(口頭での明言も含む。)も設ける。
直接交渉の制限に関する条項の留意点
  1. 直接交渉が制限される候補先は、当該M&A専門業者が関与・接触し、紹介した候補先のみに限定する。
  2. ※依頼者が「自ら候補先を発見しないこと」及び「自ら発見した候補先と直接交渉しないこと(依頼者が発見した候補先との M&A 成立に向けた支援をM&A 専門業者に依頼する場合を想定)」を明示的に了解している場合を除く。

  3. 直接交渉が制限される交渉は、依頼者と候補先のM&Aに関する目的で行われるものに限定する。
  4. 直接交渉の制限に関する条項の有効期間は、仲介契約・FA 契約が終了するまでに限定する。
テール条項の留意点
  1. テール期間は最長でも2年〜3年以内を目安とする。
  2. テール条項の対象となる事業者を、当該M&A専門業者が関与・接触した譲り受け側だけでなく、無限定とする場合には、譲り渡し側が当該M&A専門業者の手数料の発生(場合によってはこれに関する紛争リスク)を懸念し、新しくM&Aを実行すること自体を断念せざるを得なくなってしまうおそれがある。したがって、テール条項の対象は、あくまで当該M&A専門業者が関与・接触し、譲り渡し側に対して紹介した譲り受け側のみに限定する。
仲介者における利益相反のリスクと現実的な対応策
  1. 仲介契約締結前に、譲り渡し側・譲り受け側の両当事者と仲介契約を締結する仲介者であるということ(特に、仲介契約において、両当事者から手数料を受領することが定められている場合には、その旨)を、両当事者に伝える。
  2. 仲介契約締結に当たり、予め、両当事者間において利益相反のおそれがあるものと想定される事項(※)について、各当事者に対し、明示的に説明を行う。また、別途、両当事者間における利益相反のおそれがある事項(一方当事者にとってのみ有利又は不利な情報を含む。)を認識した場合には、この点に関する情報を、各当事者に対し、適時に明示的に開示する。
  3. ※例:譲り渡し側・譲り受け側の双方と契約を締結することから、双方のコミュニケーションや円滑な手続遂行を期待しやすくなる反面、必ずしも譲渡額の最大化だけを重視しないこと

  4. 確定的なバリュエーションを実施せず、依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝える。
  5. 参考資料として自ら簡易に算定(簡易評価)した、概算額・暫定額としてのバリュエーションの結果を両当事者に示す場合には、以下の点を両当事者に対して明示する。
    • あくまで確定的なバリュエーションを実施したものではなく、参考資料として簡易に算定したものであるということ
    • 当該簡易評価の際に一方当事者の意向・意見等を考慮した場合、当該意向・意見等の内容
    • 必要に応じて士業等専門家等の意見を求めることができること
  6. 交渉において、一方当事者の利益のみを図ることなく、中立性・公平性をもって、両当事者の利益の実現を図る。
  7. DDを自ら実施せず、DD報告書の内容に係る結論を決定しないこととし、依頼者に対し、必要に応じて士業等専門家等の意見を求めるよう伝える。
上記以外の中小M&Aガイドライン記載事項について
  1. 上記の他、中小M&Aガイドライン中「M&A専門業者」に関する記載事項について中小M&Aガイドラインの趣旨(*)に則った対応をするように努める。
  2. *中小M&Aガイドライン(p.8)では、「M&Aに関する意識、知識、経験がない後継者不在の中小企業の経営者の背中を押し、M&Aを適切な形で進めるための手引きを示すとともに、これを支援する関係者が、それぞれの特色・能力に応じて中小企業のM&Aを適切にサポートするための基本的な事項を併せて示す」ことが示されている。


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